診療・各部門
診療の目標・特色
当科は消化器疾患全般を専門としています。具体的に扱う疾患としては、主に消化管、肝、胆膵領域に分けられます。消化管領域では、逆流性食道炎、胃炎、腸炎、便秘、消化性潰瘍、炎症性腸疾患、癌などを多く診察しています。肝領域では、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などを扱っています。また胆膵領域として総胆管結石や胆道癌、膵炎、膵癌などに対する加療を行っています。
特に当科で力を入れているものとしては、内視鏡検査および治療が挙げられます。内視鏡検査については、拡大観察、特殊光観察といったものを使用し、より正確な診断を行える体制を整えています。また、超音波内視鏡も導入しています。内視鏡治療については止血術、粘膜切除術は勿論のこと、食道や胃、大腸病変に対する粘膜下層剥離術を行っています。胆膵内視鏡も乳頭切開術やステント留置術に加え、超音波内視鏡を使用したドレナージ術などの治療も施行しています。
当科は常勤1人という厳しい体制でしたが、2024年度から常勤医が2人体制となりました。十分な人数とはいえませんが、人吉球磨地域の中核病院として、よりパワーアップした診療が可能になると思います。
食道疾患
食道癌の内視鏡的診断及び治療
人吉・球磨地域が、飲酒量が多く、高齢化も進んでいることから、比較的食道癌も多くなっています。通常光による内視鏡観察に加えて、特殊光観察、拡大観察、色素内視鏡、そして超音波内視鏡による評価を行うことで、より精度の高い診断ができるように心がけています。生検による診断も、病理医との密な連携を行えることでより臨床に即した診断が行えるようになっています。治療についても、表在癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術や進行食道癌に対する金属ステント留置術を行っています。
食道静脈瘤の内視鏡的治療
食道静脈瘤結紮術および硬化療法、アルゴンプラズマ焼灼術を施行しています。また破裂時には緊急内視鏡および止血術も行なっています。
逆流性食道炎
本邦におけるピロリ菌感染症率の低下とともに、その症例数は今後ますます増加してくると思われます。最近では、内視鏡検査にて診断のつかない症候性逆流性食道炎と呼ばれる患者さんも多く存在することが明らかとなってきました。当院でも積極的に診断・治療に取り組んでいます。
胃、十二指腸疾患
胃十二指腸潰瘍、出血性胃十二指腸潰瘍の診断、治療
内視鏡的に診断し、治療を行います。活動性出血を認める症例に対しては積極的に緊急内視鏡を行い、クリップやソフト凝固法、エタノール局注療法、アルゴンプラズマなどによる止血術を行っています。
胃癌の内視鏡的診断及び治療
食道癌と同様、詳細な観察のもとに内視鏡診断、ならびに画像診断を行い、適切な治療法を行っています。粘膜内癌と診断される症例に対しては、内視鏡的粘膜下層剥離術を主とした内視鏡治療を行っています。内視鏡的に切除出来ない症例や、追加切除が必要な症例、外科的切除適応症例に対しては、切除範囲の診断を行い外科と連携をとり治療方針を決定しています。また進行、再発症例に対しては、化学療法を行っています。
粘膜下腫瘍の診断、治療
画像診断ならびに超音波内視鏡による診断を行っています。2cmを超えるような精査が必要なものでは超音波内視鏡下穿刺吸引などにより確定診断を行っています。手術治療が必要なものについては、外科とも連携を行い、腹腔鏡・内視鏡合同手術なども行っています。
小腸、大腸疾患
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性大腸炎等)の診断治療
潰瘍性大腸炎およびクローン病の疾患罹患数は年々増加しています。当院でも炎症性腸疾患の診断、治療を行っています。5ASA製剤、ステロイド製剤、生物学的製剤などを組み合わせ、治療を行っています。中等症以上の症例については、難病申請なども行っています。
大腸ポリープ、大腸癌の内視鏡的診断及び治療
観察おいては、画像診断ならびに内視鏡では拡大を用いた検査、必要に応じて、CT-colonographyを行っています。治療については、内視鏡粘膜切除術、内視鏡的粘膜下層剥離術を行っています。手術が必要な症例については、外科と連携を行っています。また、イレウス症例では金属ステント留置術を、進行症例では、化学療法を施行しています。
胆道系疾患の診断・治療
総胆管結石、胆管炎、胆嚢炎の診断、治療
総胆管結石、胆管炎症例に対し、内視鏡的逆行性胆管造影検査を行い、ステント留置術、乳頭切開術、採石術を行っています。胆嚢炎症例では、外科と連携を行い、手術適応がない症例では、経皮経肝胆嚢穿刺術を行っています。
膵炎の診断、治療
飲酒量が多い土地柄、急性膵炎、慢性膵炎も多くなっています。画像診断などによる膵炎の診断、重症化評価を行い、適切な治療を行っています。また重症症例については、熊本市内の施設とも連携し加療を行います。慢性膵炎については、膵癌のリスクもあるため、定期的なフォローなどを行っています。
胆道癌、膵癌の診断、治療
画像診断、内視鏡的逆行性胆膵管造影検査、超音波内視鏡検査などにて診断を行っています。治療については外科と連携し手術を行っています。また、進行症例では、化学療法や内視鏡的金属ステント留置術などを行っています。また最近膵癌のリスクであり、IPMNなどに対する画像フォローも積極的に行っています。
肝疾患
肝炎、肝癌の診断と治療
C型慢性肝炎やB型慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性肝障害を中心として、診断、フォロー、治療を行っています。隔週金曜日に熊本大学消化器内科からの肝臓専門医による肝炎外来を行っています。肝臓癌については、外科、画像診断センターと連携をとりながら診療を行っています。
主な検査医療機器
上部消化管(拡大)内視鏡、下部消化管(拡大)内視鏡、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、超音波内視鏡、体外式腹部超音波、 CT、MRI、MRCP2023年度 症例数
症例 | (件) |
上部内視鏡 | 1298 |
上部ESD | 23 |
上部EMR | 6 |
上部止血術 | 40 |
食道静脈瘤硬化療法(EVL/EIS) | 7 |
狭窄拡張術 | 19 |
大腸内視鏡 | 1395 |
大腸ESD | 14 |
大腸EMR+ポリペク | 272 |
大腸止血術 | 16 |
大腸ステント留置術 | 5 |
ERCP | 140 |
胆道ステント留置(膵管ステント・メタリックステント) | 111 |
小腸内視鏡 | 1 |
小腸内視鏡下ERCP | 2 |
超音波内視鏡 | 50 |
EUS-FNA | 11 |
EUS下ドレナージ | 2 |
スタッフ
古閑 睦夫(部長)
[専 門]消化器科全般[所属学会]日本内科学会
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会(専門医)
日本肝臓学会
深瀬 均(医員)
[所属学会]日本内科学会緩和ケア研修会
高野 理恵子(医員/非常勤)
[専 門]消化器科一般[所属学会]日本内科学会(認定医・総合内科専門医)
日本消化器病学会(専門医)
日本消化器内視鏡学会(専門医)